
こんにちは、横浜ブレイズ29番です。
今日は少し、私たち指導スタッフ自身への「自戒」も込めて、ドキッとする話をします。
選手たちに上手くなってほしくて、つい手取り足取り教えたくなりますよね。「肘を上げて」「足はここ」「バットはこう出して」…。
しかし、脳科学や運動学習の視点から見ると、あまりに早いタイミングで「たった一つの正解」を教えすぎることは、子供の可能性を狭め、意図的に『こじんまりした選手』を作り出す作業になりかねないというリスクがあるのです。
キーワードは、脳の「シナプスの刈り込み」です。
使わない回路は「廃棄」される

人間の脳には、神経細胞のつなぎ目である「シナプス」があります。
発達段階にある子供の脳は、このシナプスの数がものすごく多く、なんと大人の約1.5倍から2倍とも言われています。
なぜそんなに多いのか?
それは、子供には「何にでもなれる可能性」があるからです。どんな環境、どんな動きにも対応できるように、あらかじめ過剰なほどの神経回路を用意しているのです。
しかし、脳は非常にエネルギーを食う臓器です。
効率よく生きるために、脳は成長とともに「使わない回路」をバッサバッサと切り捨てる断捨離を行います。
これを「シナプスの刈り込み(Synaptic Pruning)」と呼びます。
「正解」だけの指導が招くリスク
ここで問題になるのが、まだ身体が未完成な時期における「指導の早すぎた正解」です。
もし大人が、早い段階で「この投げ方だけが正解だ! それ以外はダメだ!」と一つの型だけを強制したらどうなるでしょうか。
子供の脳内では、「教えられた通りの動き」をする回路だけが強化されます。
その一方で、「今は無駄に見えるけれど、将来身体が大きくなった時に必要になるかもしれない多様な動きの回路」は、「使われない=不要」と判断され、刈り込まれて(捨てられて)しまうのです。
つまり、早すぎる「型ハメ」は、子供が本来持っていた「動きの引き出し」を、大人の想像できる範囲内(=凡人)のサイズに剪定してしまうことと同じなのです。
「エラー(試行錯誤)」こそが脳の栄養

メジャーリーグで活躍する選手や、トリッキーな守備をする一流選手たちを見てください。彼らは時として、教科書にはない「変な体勢」や「独特な動き」でスーパープレーを生み出します。
あれは、子供の頃に多様な動きを経験し、脳の回路が刈り込まれずに太く残っているからできる「応用」です。
「あえてすぐには直さない」という指導戦略
そのため、練習中に選手が「変な投げ方」や「変わった打ち方」をしていても、怪我の危険がない限り、すぐには矯正しないことが大事になります。
一見、非効率で「無駄」に見える動き。
しかし、運動学習の理論では、これを「探索行動」と呼び、脳が最適な身体操作を探している重要なプロセスだと捉えます。
ここで大人が先回りして「違う、こうしなさい」と答えを与えてしまうと、脳は試行錯誤をやめてしまいます。
「お、面白い投げ方だね。どうやったらコントロールつくかな?」と問いかけ、本人に探らせる。
そうすることで、脳は「あ、この回路も使えるぞ」「こっちはダメだ」と学習し、将来どんな状況でも対応できる「太い神経回路」が育っていくのです。
「きれいな平均点」よりも「たくましい凸凹」

もちろん、肘や肩に負担がかかる危険なフォームはすぐに修正しますし、基本の型を伝えることも大切です。
ですが、私たちは「大人の正解」を押し付けて、子供をロボットのように均質化してしまうことには慎重であるべきです。
一生懸命に指導した結果、みんな同じフォームで、ミスはしないけど意外性もない「こじんまりとした選手」ばかりになってしまったら…。
それは、大人が子供の可能性の枝を「刈り取りすぎて」しまった証拠かもしれません。
全員が同じバッティングフォームで勝ち続けるチームよりも、個性的なバッティングフォームで勝ち続けるチームをブレイズは目指します。
たとえ、型にはめた方が早く結果が出るとしても、回り道をして前に進むことを選択したいと思います。
「一見、無駄に見える動きの中にこそ、将来の天才の種がある」
もし選手たちがちょっと変わった動きをしていても、「変な癖がついちゃう!」と焦らず、「お、脳がいろいろ実験しているな」と温かく見守ってあげてください。
その「遊び」の期間が、将来のすごい武器を作る土台になりますから。

