少年野球で105キロを超えるボールを投げることができれば、速球派のピッチャーになると思います。少々甘いコースにいっても簡単には打たれることはありません。


100キロくらいのスピードだとしても、コーナーに投げ分けられれば、大丈夫です。さらに緩急をつけることができれば完璧です。


ここでは、少年野球の選手が速い球を投げるにはどうすればよいのかを説明します。

速い球を投げるのに必要な身体能力

ごく普通の選手でも速い球を投げられるようになりますが、それには条件があります。速い球を投げるために以下の身体能力が必要です。

  • 瞬発力 短い時間で大きな力を出す力。
  • 柔軟性 身体が固いと、速い球を投げるのに必要な動きができない。怪我防止にもつながる。
  • 連動性 身体の動きを連動させることによって、より大きな力を出すことができる。

瞬発力


ピッチングは、直線運動を回転運動にする動きです。素早く強い力で前に動き、その動きを効率的に回転に結びつけ、腕を振ることができれば、速い球を投げられます。


素早く強い力で前に動くには、下半身の瞬発力(腰・膝・足首を使って一気に爆発的な力を出せる力)が必要です。

瞬発力を高めるには、ジャンプ系トレーニングとダッシュ系トレーニングが有効です。そのため、ブレイズのピッチャー陣の練習には、以下のようなメニューを取り入れています。

  • ジャンプ系トレーニング : ラテラルジャンプ(サイドジャンプ) / バウンディング
  • ダッシュ系トレーニング : 10Mダッシュ
  • 投てき系トレーニング : サッカーボール背面投げ



高校生くらいになれば、ウェイトトレーニングが有効ですが、まだ身体ができていない小学生の場合、ウェイトトレーニングは行いません。

柔軟性


ピッチャーに必要なのは、股関節と胸郭の柔軟性です。柔軟性があるだけで、速い球が投げられるわけではありませんが、(体操の選手がみんな速球投手になれるわけではないですよね)柔軟性がないとできないことがたくさんあります。


そのため、ピッチャーは開脚して頭が付くようになってからがスタート、ともいわれるほどです。更に、柔軟性が高いと、怪我をしにくい身体になります。


それだけ大切な柔軟性ですが、一部を除き、野球界ではそれほど重要視されていない気がします。



選手のパフォーマンスアップ、怪我防止のためにブレイズでは柔軟性を重視して、練習メニューに全員でのストレッチを入れています。特に、ピッチャー陣は、全員が開脚して胸が付くことを目標に、ストレッチの時間をより多く取っています。


選手たちの柔軟性は、まだまだ十分とはいえないので、課題として引き続き取り組んでいきたいと思います。

連動性

連動性とは身体を上手に動かす能力です。先ほどピッチングは、直線運動を回転運動に変える動き(実はバッティングもそうです)だと言いました。速いボールを投げるために必要なポイントは、いくつかありますが、それぞれが単独で発揮できる力は弱いので、上手に連動させる必要があります。

    速いボールを投げるために必要なポイント

  1. 大きな力で前に進む
  2. 大きな捻りを保ち着地
  3. 踏み出し足をつっかえ棒にして下半身にブレーキをかける
  4. 捻りを一気に解放



これらを一連の動きとして行わなくてはなりません。


それぞれの動きについて説明します。説明の際、「軸足」とか「踏み出し足」という言葉を使いますが、右ピッチャーの場合、軸足は、右足(プレートを踏む足)。踏み出し足は、左足のことを指します。

大きな力で前に進むためのチェックポイント

大きな力で前に進むには、腰、膝、足首を爆発的に伸ばすことが大切です。これをトリプルエクステンションといいます。



トリプルエクステンションの際、足を伸ばす前に、適度に曲げることが必要です。三つの関節を適度に曲げることをトリプルフレクションといいます。

トリプルフレクションでは、軸足の膝を内側に折ってはいけません。メジャーリーグの速球派のピッチャーでは、むしろ膝をプレートに残して並進を始める動きが見られます。


160キロ以上の速球をバシバシ投げるカージナルスのジョーダン・ヒックスです。軸足のヒザがプレート上に残っているのがわかると思います。


ヤンキースのチャップマン。169キロのMBLで最も速いボールを投げた選手です。この段階で軸足が倒れずに、ヒザがプレート上に残っていますよね。


シンダーガードは、最速160キロ以上、150キロ後半の速球を投げる選手です。彼もまた他の選手と同じようにヒザがプレート上に残っていることがわかります。


ブレイブス時代のキンブレルです。身体は並進を始めていますが、軸足のヒザはプレートの上にありますね。

大きな捻りを保ち着地

速い球を投げるには、踏み出し足を着地させたとき、軸足の甲と膝と腰がホームの方向を向いていて、さらに胸が三塁側を向いている(右ピッチャーの場合)ことが必要です。


つまり、踏み出し足の着地時に、上半身と下半身に大きな捻りがあることが大切なのです。


マネしてみるとわかるのですが、この姿勢はかなり窮屈です。股関節や胸郭の柔軟性がないととてもできません。


メジャーリーグの150キロ以上のボールを投げる選手は、190センチ100キロを超える大男が珍しくありませんが、それでも股割りをすれば180度開脚して胸がべったり付くほどの柔軟性を持っています。


ジョーダン・ヒックスの踏み出し足の着地です。軸足の甲とヒザ、腰がキャッチャー側を、胸は三塁側を向いていることがわかります。


チャップマンは、胸郭の柔軟性が非常に高いですよね。踏み出し足が着地したときに、下半身と上半身間に十分な捻りができています。チャップマンの軸足を見てください。甲、ヒザがキャッチャーを向いています。


キンブレルの着地です。他の選手と同じように、軸足の甲、ヒザ、腰がキャチャー方向を向いていますが、胸は三塁側を向いています。下半身と上半身の間に、大きな捻りがあることがわかります。


これはブレイズの選手の投球フォームです。踏み出し足の着地時に、胸は三塁側を向いていますが、軸足の甲とヒザがキャッチャー方向を向いていません。


下半身と上半身の捻りをもっと使えるようになれば、より速いボールを投げられるようになるでしょう。そのためには、正しいフォームを身に付ける練習をするのはもちろん、その前に柔軟性を高めなくてはなりません。


もう一人ブレイズの選手です。撮影時は三年生でしたが、身体が大きく速い球を投げることができます。この選手は胸郭が柔らかく、胸を張って投げることができています。


しかし、軸足の甲とヒザがキャッチャー方向を向いておらず、捻りを使って投げていません。そこを直せば、もっと速い球を投げられるようになるでしょう。


そのためには、この選手も、股関節の柔軟性をもっと高める必要があります。

踏み出し足をつっかえ棒にして下半身にブレーキをかける

トリプルエクステンションによって並進する身体を、踏み出し足をつっかえ棒にしてブレーキをかけます。そうすると、車に乗っているとき急ブレーキをかけられたように、上半身が一気に前に倒れます。


その力を利用して直線運動を回転運動に変えます。


ジョーダン・ヒックスのリリースです。踏み出し足が地面に対して鋭角になっていて、つっかえ棒の役割をしていることがわかります。


この画像ではリリースを少し過ぎていますが、チャップマンも踏み出し足をつっかえ棒のように使っているのがわかると思います。


シンダーガードのリリースの瞬間です。踏み出し足が地面に対して鋭角になっています。


ブレイズの選手のリリースです。踏み出し足が地面に対して直角になっています。この選手は、ブレイズで一番速い球を投げますが、踏み出し足をつっかえ棒のように使えるようになれば、もっと球速があがるはずです。


ちなみに後ろでキャッチボールしている(赤丸で囲った)選手は、よい投げ方をしてますね。

捻りを一気に解放

踏み出し足をつっかえ棒にするのと、捻りを一気に解放するのはほとんど同時に行われますが、時間的にはつっかえ棒がちょっと早くなります。

つっかえ棒にした着地足は、そこから曲げるのではなく、逆に伸ばしていきます。

下半身をストッパーにして並進を止め、腹筋を使って捻りを一気に解放して、指先を走らせて、ボールをリリースします。


キンブレルのフィニッシュです。踏み出し足を伸展させ、しっかりと体重を受け止めています。


日本人選手はいないの? といわれそうなので、探したらいい写真がありました。千葉ロッテの東條選手です。

【まとめ】少年野球のピッチャーが速い球を投げる方法

さて写真をつかって、目指すべきフォームと現状のブレイズの選手の問題点をあげながら、速いボールを投げる方法について長々と説明してきましたが、もう一度大切なことをおさらいしましょう。

速いボールを投げられるピッチャー = 瞬発力がある × 柔軟性がある × 連動性がある

ということです。

「連動性がある」とは、以下のポイントをそれぞれ独立して行うだけでなく、一連の動きとして連動性を持たせて行うことを指します。

    速いボールを投げるために必要なポイント

  1. 軸足のヒザをプレートに残す
  2. 軸足の股関節、ヒザ、足首を爆発的に伸ばして並進
  3. 踏み出し足の着地時に、軸足の甲とヒザはキャッチャー側に、胸を三塁側に向ける
  4. 地面に対して鋭角になるように踏み出し足を着地させつっかえ棒にする
  5. さらに踏み出し足を伸展させ、腹筋を使いながら捻りを一気に解放させてリリース



ただし少年野球選手の場合、筋力がまだ弱いので、この投げ方をすると下半身のブレにつながり、コントロールが乱れる場合があります。


それでも、中学、高校と進むうちに筋力が付いてきて、フォームが安定し、コントロールが改善されるはずです。


スケールの大きな選手を育てるためにも、小学生のうちは多少コントロールが悪くても小さくまとまることなく、正しいフォームを身に付けさせてあげたいと考えています。


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Yokohama Blaze

横浜市南区少年野球チームの横浜ブレイズです。できたばかりのチームですが、スタッフはみんな経験豊富で、子供と野球が大好きです。 子供の特性を理解して練習スケジュールを組み、楽しく愛情をもって丁寧に指導します。